従業員が偽装結婚していた

偽装結婚は不法就労?!

以前、クライアント企業で起きた事例です。食品加工の会社で、地元の主婦層を中心に15名ほどのパートタイマーを雇用していました。その中に『日本人の配偶者等』の在留資格を持つ外国人がいたのですが、彼女が偽装結婚であったことが発覚したのです。

こんな場合、一体どうすればよいのでしょうか。

この事例のときもそうでしたが、いきなり懲戒解雇は避けるべきです。

そもそも不法就労とは、どういった場合を指すのか?一言でまとめると『就労する資格を持たないで就労する場合』を指します(入管法19条、70条に規定)。

 

不法就労になるのはどの時点から?

不法就労になるのは『就労する資格を持たないで就労する場合』が発生したときからです。例えば

・就労することができない在留資格で就労していた

・在留資格はあってもその範囲外で就労していた

・在留期間更新(変更)を行わず在留期間を経過した後に就労していた

などが考えられます。

偽装結婚は確かに入管法違反ではありますが、この事例の場合は在留期間内でしたので『就労する資格を持たないで就労する場合』に該当せず、不法就労とはなりません。従って、有効な在留資格を有する間は雇用し続けていても、「不法就労助長罪」は成立しないという結論になります。そうは言っても、本邦の法律を犯していることが事実であれば、会社としてはなんらかの措置を講じる必要があります。しかし、いきなり懲戒解雇をしてしまうと、労働基準法の制限がかかってしまう恐れがありますので、会社がとるべき対応としては、まず本人と面談を行い、事態を把握することが大切です。そこで本人が偽装結婚を認めたのであれば、雇用管理の面からも、在留期間更新の許可が出るまでの間、出勤停止等の措置をとるべきだと考えます。

なお、在留許可更新が不許可になるなど、今後不法就労となり得る状況になった場合は懲戒解雇ではなく、普通解雇することになります。

【労働基準法20条】

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

 

【入国管理法19条】

別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者は、次項の許可を受けて行う場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる活動を行つてはならない。

1 別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもつて在留する者 当該在留資格に応じこれらの表の下欄に掲げる活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬(業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるものを除く。以下同じ。)を受ける活動

2 別表第一の三の表及び四の表の上欄の在留資格をもつて在留する者 収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動

別表第一 第二