売掛金未回収のリスクは誰が負うのか

営業担当者に責任を負わせるのはアリ?

売掛金の回収は会社にとって大変重要なものです。売掛金を回収することで初めて売上がキャッシュになり、資金として経営活動に回すことができます。しかし、この売掛金が回収できなくなる可能性があるのも事実です。

例えば、今回のようなコロナウィルス感染拡大による経済活動の停滞によって、取引先の経営難や倒産など、突然の被災で理由売掛金ができなくなって(遅延)しまうこともあります。

では、売掛金が回収できなかったとき、その責任は誰が負うのでしょうか?経営者か?営業責任者か?あるいは営業担当者か?

そもそも「売掛金」とは、商取引が発生した時点で販売側に生じる「商品やサービスに対する支払いを請求する権利」であり、これを「債権」といいます。

売掛金は売り手と買い手、双方によって決められた期日に支払われるのが通常であり、買い手はその期日までに指定の方法で代金を支払わなければなりません。

売掛金未回収が発生した際、会社が損害を被ったということで営業担当者を懲戒処分するといった事例も少なくないようです。ひどい場合には、未回収代金を給料から天引きするという話も聞いたこともありますが、こういう規定は会社として問題はないのでしょうか?

 

ある判例です。

【事件概要】

・売掛金未回収により800万円以上の損害を被ったとして退職届を提出した営業課長を届け日よりも前に懲戒解雇。

・営業課長は退職金の支払いを求めると共に、懲戒解雇処分により精神的被害を被ったとして300万円の損害賠償を請求。

・これに対し、会社は営業課長に対し、回収不能となったことによって被った損害賠償を請求。

【判決】

・会社に対し、懲戒解雇処分を無効とし、営業課長に対する退職金約1,300万円および慰謝料200万円を支払うよう命じる。

・営業課長に対しては回収不能分のうち損害額の約1/4にあたる200万円を支払うよう命じる。

 

懲戒解雇処分にしたのは、この営業課長が退職の意思表示をしたからであって、おそらく退職金を渡さないための措置だったと思われます。

どんなに職務怠慢でも、会社の管理体制に少しでも不備があれば会社の責任問題として扱われることが多くなります。基本的に売掛金未回収の責任は営業担当者にはありません。故意やよほど重大な過失でない限り、未回収の責任を営業担当者に求めることは難しいでしょう。