外国人従業員のパスポート、会社が預かってはいけない

パスポートは本人が保管すべき

以前雇っていた外国人が、突然行方不明になったという経験から、外国人を雇い入れる際に、本人の同意を得てパスポートを預かるようにしているという話を何度か聞いたことがあります。

このパスポートを預かる行為は、大いに問題がありますのでそれについて解説します。

雇用対策法では、外国人雇用に関する雇用管理について規定があります。この規定は、外国人が「安い労働力」として位置づけられ、労働条件において不利な状態にならないよう考慮されているからです。

平成19年厚生労働省告示276号に「外国人労働者の旅券等を補完しないようにすること」とはっきり記載されていますから、会社側に事情があったとしても、認められるものではありません。

会社として、パスポートを預かりたい理由は、前述のように突然行方不明になるような事態を防止したいということのほかに、次のような事情も考えられます。

・外国人従業員の在留資格を確認したい

・海外出張のための航空券を手配したい

ですが、これらの場合であっても原本を提示してもらってコピーを保管しておけば足り、原本を預かる必要はありません。

雇用対策法に定められている外国人雇用に関する雇用管理の規定は努力義務であるため、パスポートの原本を会社で保管していたとしても、罰則規定の対象外です。ですが、民法上の不法行為(民法709条)に該当する場合もありますので、例えば「会社にパスポートを預けていたせいで、本国に帰れなかった」というような言い分によって、損害賠償請求を受ける可能性はないとは言えないことになります。

弁護士を立てられた時の対応は

弁護士からの連絡は、内容証明が送られてくるのが一般的です。「本人から委任を受けましたので、〇〇については当職宛てにお願いします。」こういう感じ(実際はもう少し堅いですが)で、「本人に連絡しないでくれ」という内容になります。この場合、本当に本人と連絡を取ってはいけないのかというと、そんなことはありません。なぜなら、代理人がいるからといって本人と接触してはいけないということは、法律に規定されていないからです。ただ、本人に連絡をしたとしても「弁護士を通してくれ」と言われることがほとんどで、直接交渉することは難しいと思います。

もし仮に、弁護士を立てられた理由がパスポートの返却という「事実行為」だけを目的とするのであれば弁護士を通じなくても返却は可能です。いずれにしても速やかに原本を返却しましょう。

【民法709条】

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。