契約の成立要件

契約を成立させる3要件

企業は、取引先との関係を築いていくことで、初めて事業運営が成り立ち、企業としての活動が行えます。そして、その関係を築くために必要不可欠なのが契約であり、お互いに条件が付与され拘束されることになります。

【契約成立の要件】
・意思表示の合致
・当事者の存在
・契約の目的物の存在

そもそも当事者がいなければ、契約が成立しないことは言うまでもないことです。契約とは「目的となる物(あるいは行為)」があること。そして「申込」に対して「承諾」するという、双方の意思表示が合致することで成立します。それは、コンビニで缶コーヒーを買うのも、ディーラーで車を買うのも同じ原理です。こちらが売りたいと思っても、相手がいなければ物は売れませんし、知らない相手へ勝手に物を送りつけても、代金を払ってもらうことはできません。

ただし、商人間の法律関係では商法が適用され、次のような規定があります。

【商法】 
第509条 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

 

商人間の平常取引とは、ある程度継続して取引関係がある場合の取引のことを指しますので、単発、あるいは数年前の取引は対象にならないと思ってよいでしょう。

そのほか、契約の内容が実現不可能なものや、法を犯してまで履行させようとする内容の契約は当然無効になります。契約の内容を定める場合には、その契約をするのは誰と誰なのか、何をするための契約であり、それをいつまでに行うかということをしっかりと決めておく必要があります。

もうひとつ、ここで注意すべき点は、一部、法律に定められた取引をのぞけば、契約書を作成しなくても、口約束だけで契約は成立するということです。

契約書は、契約内容を明らかにし、トラブルを避けるために作成するためのもので、契約の成立要件ではありません。契約書とは、申込と承諾という2個の意思表示を1つの書面にまとめ証拠書類にしたものと考えられているからです。あとから最初の約束とは違った状況になった場合、これらの要件が書かれた契約書を争いの場に持ち込むことで、違反をされたときに法的な執行をしてもらうことができるようになります。

忙しかったり時間がなかったり、急ぎだからという理由で書面を作成せず、口頭の簡単な説明のみで仕事に着手していることはありませんか?契約書の作成は確かに面倒ですが、場合によっては、契約書を取り交わさないことが違法になることもありますので、今一度、社内で見直すことをお勧めします。