消費者団体訴訟制度とは

企業が恐れる適格消費者団体

消費者団体訴訟制度(団体訴権ともいう)とは、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって事業者に対して訴訟等をすることができる制度のことです。

民事訴訟の原則的な考え方では、被害者(消費者)が、加害者(事者)を訴えることになりますが

1消費者と事業者との間には情報の質・量・交渉力の格差があること

2訴訟には時間・費用・労力がかかり、少額被害の回復に見合わないこと

3個別のトラブルが回復されても、同種のトラブルがなくなるわけではないこと

これらの理由から、内閣総理大臣は認定した消費者団体に特別な権限を付与しています。

通常、景品表示法に違反する表示が行われた場合、消費者庁長官や都道府県知事による「措置命令」の対象となることがあります。

一般的な措置命令は以下の通りです。

・問題の表示の差止め
・違反表示の事実について新聞広告などで消費者へ周知すること
・再発防止を講じる措置を行うこと
・今後同じような表示をしない

ただし、行政指導の前に事業者自らが改善措置を講じた場合、措置命令は出されません。

ですが、適格消費者団体が相手となると、ちょっと事情が変わってきます。この法律に違反する状況があると判断した場合、適格消費者団体はまず、事業者に対して書面による差止請求を行います。

例えば「直ちに、貴社のテレビコマーシャル、ホームページ及びパンフレット等の広告において、『30日間全額返金保証』及びその内容の記載を削除することを申し入れます。」こんな感じです。

ある適格消費者団体が事業者に送った申入れ書には、このような一文が入っていました。

「本書面並びに本書面に対する貴社からのご回答の有無及びその内容等、本書面に関する経緯・内容についてはすべて公表させて頂きますので、この旨申し添えます。」

丁寧な文章ですが、要するに「言われたとおりに是正しなければマスコミに情報を提供して世論に訴えるぞ」と言っているようなものです。

消費者庁よりも適格消費者団体が怖いのは、こういう風にマスコミを使ってネガティブキャンペーンを仕掛けてくることころです(本当にやります)。

マスコミに報道されれば、事業者は少なからずマイナスの影響を受けることになります。消費者庁や裁判所が景品表示法違反を認定したわけでもなく、消費者団体が申入れ書を送っただけであっても、ニュースを見た人は、あたかもその事業者が景品表示法違反をしたかのような印象を持ってしまうでしょう。

書面による差止請求が事業者に到達して1週間を経過した場合、もしくは事業者が差止請求を拒んだ場合、適格消費者団体は、その事業者に対する差止請求訴訟を提起することもできます。

万一、適格消費者団体から申入れ書が届いた場合、突っぱねることも可能ですが、訴訟に発展するような泥仕合は避けて、すぐに改善策を講じるのが得策であると言えます。