出向の定義、派遣事業、供給事業との差異

そもそも出向とは?

現在のところ、出向について明確な法的規定は存在していませんが、労働者を提供する会社と受け入れる会社、労働者という三角関係が発生するという意味においては、外形的に派遣や労働者供給と似通った点もみられます。

【派遣の定義】

「自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令下で労働に従事させること」ただし「他人に雇用させることを約してするものを含まない」

【労働者派遣法】

第2条1号

労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

在籍出向は、出向元と労働者の間だけでなく、出向先と労働者の間にも雇用契約が存在するので、派遣には該当しません。

【労働者供給とは】

「契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」ただし「派遣労働を除く」と職業安定法に規定されています。これにより「在籍型出向は、その形態は、労働者供給に該当する」というのが行政解釈です。

なお、労働者供給を「業として行う」ことは、職業安定法第44条で禁止されています。

【職業安定法】

第4条第7項

この法律において「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第二条第一号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。

第44条

何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

 

【出向が職業安定法違反とならないケース】

1.雇用機会の確保
(1) 雇用量の調整(雇用量が過剰と判断されたときに関連会社に出向させ、出向先に人件費を負担させることにより人件費の節約に資する。整理解雇を回避するための一つの手段として実施される。)
(2)
 ポスト不足対策(中高年齢社員を子会社・関連会社に出向させ、一定のポストにつかせる。)
(3)
 高年齢者の再就職対策(定年前後から他の企業へ出向させ、最終的には転籍につなげる。)

2.経営・技術指導
(1) 子会社・関連会社の経営管理、技術指導、技術支援
(2)
 経営不振に陥った企業の再建のための支援

3.職業能力開発
(1) 若手社員の人材育成(能力開発を図るなど、専門的な知識・技術を習得するために行う。特に子会社から親会社への出向が多い。)

4.企業グループ内人事異動
(1) 経営の多角化の効率的推進(新規事業を行う子会社、関連会社等を設立し、若手、中堅社員を出向させる。)
(2)
 人手不足対策(人手不足の子会社に出向させる)
(3)
 人材の交流(親子会社間、関連企業間での連携を強化することをねらいとする。

定期的に相互間で行うことが多い。

上記1~4のケースは社会通念上、業として行われていると判断されません。

ただし、高額の差額を収益として計上すれば、この条件から逸脱してしまいます。また、出向という名称が用いられたとしても、実質的に労働者派遣とみなされるケースもあるので、注意が必要です。