「趣味」を活かして起業することはできるのか

起業することはできるが成功するかどうかは別問題。マーケティングの大切さ

「趣味で起業する方法」や「好きなことをやって稼ぐ」こんなタイトルのネット記事や書籍をよく見かけます。それら、目についたものを読んだ感想は、なるほどと思う内容もあれば、「???」と思うものもあり、様々です。

昨年、コロナ禍にあっても起業を果たした方は大勢いらっしゃいます。当事務所でも多くのご相談をお受けし、支援をさせていただきました。

今回は創業支援、資金調達などを得意とするコンサルタントの立場として、ビジネスの立ち上げに必要なことを記事にしたいと思います。

「趣味」を仕事にするということは、自分が好きなことをやって利益が得られるという、とても魅力的な起業法ですが、一方で、稼げるかどうかは別問題です。

まず第一に、ビジネスを成功させるためには市場(需要)が必要であり、数多いライバルの中から自分を選んでもらわなければなりません。

確かに自分の好きなことが商品になって、それが売れたらとても気持ちがいいでしょう。

ネット記事や書籍では、上手くいった人たちが「好きなこと(趣味)で稼げる」ということを言っているわけですが、万人に当てはまることではなく、実際には「好きなこと」の多くはなかなか売れないのが現状です。

昔お世話になった先輩が数年前にBARをオープンさせたときのお話です。とても雰囲気のよいお店で流行りそうな気がしていたのですが、1年ちょっとで潰れてしまいました。

場所が悪いわけでもなく、値段が高いわけでもありません。潰れた理由は簡単、マーケティングをせず、自分の「好き」を優先させたからです。

元々お酒が大好きで、その「好き」が高じてオープンさせたお店はラインナップが自分好みで、お客さんは知り合いだらけだったのです。

商売が上手くいかない理由はいくつかあります。例えば

・売りたいものだけを売っている
・お客さんが求めている商品がない
・ライバルが多い
・商品を求めているお客さんを探し出せていない

BARで常連客が沢山いれば、一見、活気づいているように見えますが、新しいお客さんの居心地はよくないですし、飲みたいお酒がなければその店に行く理由がありません。

コンサルタントとして言うならば、「趣味」で起業するにしてもマーケティングは絶対必要だということです。

・売りたいものは何か
誰にどうやって売るか

商品を作り出すには大変な労力がかかります。その商品が売れなかった場合、打撃を受けるのはいうまでもありません。ですが、マーケティングをしっかり行えばお客さんが求める商品を予め知る(予想する)ことができます。すぐ売れることがわかっていれば商品開発も無駄なく進めることができます。

本当にわかってくれる人だけが買ってくれればいいという思考は起業には向きません。売れるものを扱うことがビジネスには必須です。

ご相談者の中にも、起業はしたいが目的がはっきりしていなかったり、マーケティングに関して全く無頓着だったりする方が一定数いらっしゃいます。マーケティングはしっかり勉強すればある程度は理解できるようになると思いますが「目的」がはっきりしていなかったり、単なる憧れだったりで起業を目指している方には、一度冷静になってもらうようにお伝えしています。

起業とは、あらゆることを自分で選択できる自由があると同時に、生き方も変わります。また、起業すると、毎月の固定給という「安定」を捨てることになります。「安定」を捨てるということは、毎日「不安定」と闘い続けなければいけないということに他なりません。

趣味や好きなことを仕事にすること自体は間違っていないと思いますし、成功すれば本当に素晴らしいことです。だからこそ、マーケティングをしっかり学ぶことこそが、経営者に必要不可欠なことであり、成功への第一歩だといえるでしょう。