ADRとはどういうものか?

ADRは裁判より経済的

ADRはAlternative Dispute Resolutionの頭文字をとったもので、日本語で「裁判外紛争解決手続」と表現されます。

「裁判外紛争解決手続」は、例えば調停手続などが挙げられ「裁判で争うほどの内容ではないが話し合いで問題の解決につなげたい」というような内容を取り扱う場合に用いられます。

認知度はあまり高くありませんが、以下の理由により、裁判で争うほどではない少額な紛争において大きな効果が期待できます。

解決までの時間が短い
期間に関しても裁判は控訴や上告などの仕組みがある以上、ケースによっては話が長期間に及ぶ可能性があることも意識しておくことが大切です。訴訟手続は第一審で半年~2年程度の時間を要することも少なくありません。控訴審・上告審へと進んだ場合、更に時間がかかってしまいます。その一方で、ADR3回程度(およそ3ヶ月)が目安であり、早期解決が可能になります。

当事者による自主解決
例えば裁判の場合、実施者は裁判所(裁判官)で、弁護士が話を進めていきます。しかし、ADRの場合は実施者が行政書士、話を進めるのは当事者同士です。
ADRは話し合いのための手続ですから、和解案に関しても当事者同士で決めていくため、当事者の意向を尊重した解決が可能です。他また、中立な立場の専門家(行政書士)が仲介するため、法的妥当性も確保されます。

経済的
訴訟手続ではコスト面で当事者に大きな負担がかかることが多いですが、ADRでは弁護士費用などが不要です。そのため、少額事件や簡易な事件に限らず、紛争一般について経済的であるといえます。

非公開
ADRでは手続が非公開であるため、企業秘密に関する紛争など、争いの内容を知られたくない場合に適しています。

ADRを選択したとしても当事者同士の話し合いで解決に至らない場合、訴訟が検討されることになりますが、そういった事案はそもそも当事者間に合意が成立する可能性は低く、始めから訴訟の提起が検討されるケースが多いように思います。

しかし、相手方が感情的になっているようなときでも、公平な第三者が立ち会うことで、冷静な協議ができれば合意成立の可能性もある程度見込まれるという場合には、ADRの利用を検討する余地があると言えます。

ADRの利用を検討する際には、事前の当事者同士における話し合いの段階で、相手方に譲歩の可能性がどの程度あるかを見極めておくことが重要といえるでしょう。

なお、一定の類型の紛争については、法律上、民事訴訟を提起する前に必ず民事調停を申し立てなければならない(調停前置。たとえば、賃料増減額請求について、借地借家法11条、32)とされているものがあることにも注意が必要です。