「行政不服審査制度」とは

行政が下した「処分」に対して、不服申立てができる制度

国や地方公共団体(行政庁)は、法律に基づいて、税や社会保障に関する決定や認定、企業に対する営業の許認可など、様々な形で多くの行政事務を行っています。

例えば、営業許可などの許認可、あるいはその取消し、改善命令などのほか、人や物を強制的に収容・留置する行為などがそれにあたり、法令に基づいて行政に認められた公権力を、行政庁が国民や住民、法人などに対して行使することを「処分」といいます。

処分は法令に基づいて行われますが、ときには「行われた処分に納得できない」といった場合があります。

例えば、法律に従って出した許可申請が拒否された場合や、申請どおりの認定が受けられなかった場合、また、申請をしたのにいつまで経っても何の処分も下されないなど、行政の対応に納得がいかないことがあるかもしれません。

このような行政庁による処分(処分されずに放っておかれていることも含め)に対して不服があるとき、不服申立てをすることができるのが「行政不服審査制度」です。

不服申し立ての要件と手続きの流れは以下のとおりです。

 

【不服申立ての申請人】
・処分を受けた者
・申請に対する処分が行われない不作為の場合は、申請を行った者
・第三者に対する処分によって、権利利益の侵害を受ける(おそれのある)者

 

【不服申立ての申請期間】
・原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内

ただし、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、その後に処分があったことを知った場合でも、原則として不服申立てをすることができません。

 

なお、処分を行う行政庁は、処分相手に対する「教示義務」があるので「処分」を行う際、不服申立ての方法や申立先、期限などの説明を行わなくてはなりません。何らかの処分を受けた場合などは、こうした記載を必ず確認するようにしましょう。

 

【手続きの流れ】
審査請求
請求人の氏名・住所、処分の内容、審査請求の趣旨・理由などを記載した「審査請求書」を作成して、審査を行う行政庁(審査庁)宛てに提出します。

形式審査
審査庁は、審査請求書に必要な記載事項に誤りがないか審査し、不備がある場合には申請人に対し補正を求めます。

審理員の指名
審査庁は、審査庁の職員の中から「審理員」を指名します。審理員は、対象の処分に関係していない者が指名されます。

審理手続
審理員が行います。このとき、必要に応じて、請求人および処分庁から、それぞれの主張や証拠提出を求める場合があります。また、請求人は証拠提出のほか、口頭による意見を述べることができます。

審理員意見書
審理員は審理手続の結果に基づいて意見を審査庁に提出します。

諮問・答申
審査庁は、審理員の意見を踏まえ第三者機関に諮問します。第三者機関は第三者の立場から審査庁の判断の妥当性をチェックし、その結果を答申します。

裁決
審査庁は、以下いずれかの裁決を行います。
・却下 → 審査請求の要件を満たしていないなど適法でない場合
・棄却 → 行政庁の処分が違法または不当でない場合
・認容 →行政庁の処分が違法または不当で場合

 

裁決の内容に不服がある場合は、訴訟に移行することができます。また、特に法律で定められた場合には、行政庁に対して、再審査請求をすることもできます。

処分に対して不服がある場合、もちろん最初から訴訟を起こすという方法もありますが、訴訟は厳格な分、手続が複雑で、相当の費用と時間を要します。一方、行政不服審査制度は、費用もかからず、裁判よりも短い期間で結論を得られることが大きなメリットと言えるでしょう。