退職した外国人が帰国するときにもらえる「脱退一時金」
「脱退一時金」の制度は外国人だけ
国民年金や厚生年金は、加入要件に国籍要件がないため、日本に滞在する中長期在留者も加入する義務がありますが、本国に帰るとき、今まで支払った年金が無駄になってしまわないように、「脱退一時金」という制度があります。
「脱退一時金」が支給されるためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
1.被保険者期間が6カ月以上であること
2.受給者が日本国籍を有していないこと
3.年金受給権を有していない、または障害手当金を受給されていないこと
4.日本に住所を有していないこと ※原則出国後の請求
この「脱退一時金」一体いくらもらえるのかというと、金額は被保険者期間に応じて、支給率が算出されます。正確な金額を算出するのは少々複雑ですので、「年収の約9%が3年分を上限として支給される」とお考えいただければよいと思います。
ちなみに現行の制度では支給上限年数が3年となっていますが、2021年4月より支給上限年数が5年に引き上げられることになりました。これは、在留年数が3~5年の外国人の割合が増加している実情に対応するためです。なお、請求できる期間は被保険者の資格を喪失して日本に住所を有しなくなってから2年以内ですので注意してください。
もうひとつ気をつけておかなければいけないのが「社会保障協定」です。「社会保障協定」とは、各国の社会保障制度において、保険料の二重負担や年金受給資格の問題を防止するために加入するべき制度を日本と相手国との間で調整して、年金加入期間の通算を行うための協定です。
年金加入期間の通算が認められる相手国の外国人が、帰国後「脱退一時金」を受け取ると、その期間は協定において、年金加入期間として通算できなくなります。予め受け取れる金額を計算して、もらうべきかどうか、よく考えなくてはいけません。
外国人の中には「厚生年金に入りたくない」という人もいるようです。その場合、厚生年金に加入しないまま働くことはできないと説明する必要があります。ですがその際「義務だから入ってもらいますよ」という説明だけでは納得しない外国人もいるのではないでしょうか。そんなとき、「脱退一時金」の制度があることを伝えることも納得してもらうひとつの方法です。その他にも、障害が残った時に受け取ることができる障害年金や、万が一死亡した時にご遺族に対して一定額が支払われる遺族年金の制度など、厚生年金加入によるメリットを説明すると良いかもしれません。
日本人でも年金制度は複雑に感じる部分が多いと思います。そんなときは、年金事務所などに助言を求めるなどして外国人雇用者に対して適切な対応を行うよう心がけましょう。