「覚書」と契約書はどう違う?

標題によって法的効果が変わるわけではない

企業間の商取引において「覚書」というものを目にしたことがある方もいらっしゃると思います。

「覚書」とは、契約書を作成する前の段階で、当事者双方の合意事項を書面にしたものや、既にある契約書を補足・変更した文書のことを言います。

「覚書」の作成で、特に多いのは次のような場合です。

 

・契約書の代わりに作成する(標題が「覚書」となっているだけで内容は契約書そのもの)

・契約書の補完・補足のために作成する

・契約内容を変更した場合、その合意内容を書面に残す

 

「覚書」は契約書の補助的な役割として扱われることがありますが、契約書と同様、法的な効力を持つ書類になります。

標題を「覚書」とするか「契約書」とするかは慣例によって決まることがあるようですが、記載内容が当事者間の契約を定めたものであれば、契約書としての実態を備わっているものとみて間違いないでしょう。従って、標題によってその重要性が決まるものではありません。

契約交渉の場面で、契約書の文言修正ができないため「別途、覚書で対応した」という経験のある方もいらっしゃると思います。この場合、契約書が元のままでも覚書によって契約内容が変更されることになりますのでご注意ください。

また、印紙税法では、契約書・覚書、その他名称を問わず、「重要な事項(契約の成立等を証すべき文言)」が含まれているかどうかにより判定することとされています。

さらに覚書の内容を変更するときに重要なのは、効力が発生する日付です。覚書の中に日付がない場合には署名・捺印をした時点から効力が発生しますが、やはり、●月●日から変更後の内容に従うかを明記しておく方がよいでしょう。

そしてもうひとつ。覚書で変更しないことについては、その旨も記載しておくことが重要です。

【記載例】

第●条  甲及び乙は本覚書に記載のない事項については原契約の規定に従う。


また、少しでも契約内容などに変更があった場合は、後々のトラブル回避のためにも、必要に応じて覚書を作成し、保管しておきましょう。書類の作成、双方の署名捺印をもらうという手続きは少々面倒に感じるかもしれませんが、これをしておかないと証拠として残らず、「言った、言わない」の水掛け論になってしまう可能性もあります。

標題が「覚書」になっていると契約書よりも軽く感じてしまうこともあるかもしれませんが、法的にはどちらも同じですので、誤解のないようにしたいところです。