外国人従業員が突然失踪してしまったら

「技能実習生」の失踪はここ5年でおよそ2倍

近年、外国人技能実習生の失踪が増えています。平成30年に失踪した人数は9,052人(平成31328日 法務省発表)で、5年前の4,847人に比べ、およそ2倍に増えた計算です。なお、直近5年間(平成26年から平成30年)の失踪者は31,849人にもなります。

なぜ、きちんと話合いもせずに突然失踪してしまう(母国に帰った)のでしょう。出入国在留管理局の発表によると、原因の多くは「賃金の不払や実習実施者側の不適正な取扱い」「実習生側の経済的な事情」によるといいます。失踪増加を受けて出入国在留管理局から失踪防止の施策が公表されていますが、どれくらいの効果があるかは疑問です。

では、外国人従業員が失踪してしまったら、会社は具体的に何をしなくてはいけないかを考えてみましょう。

1、失踪した外国人が技能実習生の場合は監理団体に報告する

報告後は、会社と監理団体の双方で、できるかぎり行方を捜しましょう。

2、同じ部署の同僚に確認してみる

同僚の外国人から聞き取りを行うなど、何か情報がつかめるかもしれません。

3、警察に相談する

「母国に帰ります」と書置きなどがあった場合でも本当に帰ったかどうかわかりません。事件に巻き込まれた可能性もありますので、警察にも相談してください。

4、出入国在留管理局に報告する

失踪後、数日経っても見つからない場合は出入国在留管理局に報告をしましょう。報告を怠っている間、外国人が国内でトラブルを引き起こしてしまったら、会社の責任にもなりかねません。変に隠し立てをするより、正直に報告することが出入国在留管理局との信頼関係を築くことにもなります。

5、退職手続きをする

雇用保険、社会保険(健康保険、厚生年金)の資格喪失手続きを行います。ただし、失踪・行方不明として退職手続きを行う場合、就業規則にその旨の定めが必要です。失踪・行方不明になったときに退職となる定めが無い場合は早急に就業規則の改定を行ってください。

解雇要件の例: 本人と連絡がとれないまま勤務の意思が確認できず30日を経過したとき

6、給与の支払い

就業していない期間について給与を支払う必要はありませんが、失踪するまでに就業した分の給与は支払う必要があります。なお、給与は本人以外に支給することはできません。口座振込の場合は通常通りの支払いをして、未払い給与がない状態にしておきましょう。

 

遠い日本へやってきて、自社の一員として働いていた外国人が突然失踪してしまうことは、非常に残念なことです。失踪した後、彼らが日本で生活を続けるのは困難です。見つかれば不法滞在、不法就労という事で強制送還されますし、母国に帰っても、経済的な面で苦労する可能性もあるでしょう。それでもなお、失踪を選択するということは、よっぽどの事情があるのだと思います。

出入国在留管理局の失踪減少の施策は、技能実習生の新規受入れ停止や企業名公表などの取扱いも導入されています。企業側も、失踪防止に向けたさらなる対策として、在留カードの確認を徹底するなど、より一層注意をしていくことが求められるでしょう。