ひな形を使うときに注意すべきこと

便利なテンプレート。でも、そのまま使うのは危険

契約書を作成したいとき、今はインターネット上で簡単にテンプレートを探すことができます。テンプレートは契約書を作る際に、必要な項目が網羅されているので、当職もよく使っています。

書類作成のプロなのにテンプレートを使うのか?と思われたかもしれません。しかし書類作成のプロである行政書士は、テンプレートに不足している部分(あるいは不要な部分)やクライアントにとって不利益かどうかを判断できるからこそ、テンプレートを使いこなせているのです。

テンプレートを用いる場合、次の点について、必ず確認する必要があります。

・取引内容(事業内容や取扱い商品)に合っているか

・その取引で起こりそうなトラブルに対応できるかどうか

・会社にとって不利な条項をそのまま使っていないか

そして当たり前ですが、そのテンプレートを流し読みせず、じっくりと全て読むことが最も大事です。

通常商品を販売し、お店で引き渡す(売る)場合と製品製造を依頼する場合では、契約のかたちが違います。お店で商品を売るのは「売買契約」で、製造を依頼するのは「製造物供給契約」と呼ばれ、使うテンプレートも製品の特性や受注方法によって、様々なものが存在します。その選択は非常に難しく、内容をチェックせずテンプレートを使用するのはリスクがあります 。

では、テンプレートを使用するとき、どのように修正すればよいのでしょうか。

 

 

【 修正前 例 】

第●条(本製品の製造) 受注者は、●年●月●日までに本製品を製造する。

いかがでしょうか。一見何の問題もないような文言ですが、この書き方だと製品が完成した後に「思っていた製品と違うから要らない」というようなクレームが出たとき、代金の支払いを拒否されるなど、大きな損失を被ってしまいます。それだけではなく、SNSや口コミで思わぬ悪評が投稿されるなど、思いも寄らない影響を受けてしまう可能性も考えられます。

【 修正後 例 】

第●条(本製品の製造)

1)発注者は受注者に対し、●年●月●日までに、本製品の仕様書を提供する。受注者は、受領した仕様書を確認し、不足事項等があれば、速やかに発注者と協議の上で確定しなければならない。

2)受注者は、前項の仕様書に従って、●年●月●日までに、本製品を製造する。

項目が増え、修正前と比べてより具体的な内容になりました。「仕様書」を提供してもらえれば、発注者の製品に対する具体的な要望を確認することができ、さらに期限付きで用意してもらうことを義務にすることで、納期の遅れなどがあったときに責任の所在が明らかになります。

内容に合った正しい契約書を作成することは、トラブルを回避するための事前対策として、とても重要な予防法務ですが、法務部門を持たない中小企業・小規模事業者にとって、大変手間のかかる作業です。これから契約書を作ろうとされている、あるいは自社で使用されている契約書をチェックされる際は、専門家にご相談されることをお勧めします。