利用規約の「免責規定」が無効になる?

「責任を一切負わない」という規約は無効です

取引が始まる前や申し込みをするとき、契約書へのサインや、規約に同意することが多いと思います。しかし、内容の全文を読む方は意外と少ないのではないでしょうか。「モバゲー」を運営するDeNAに対し、今年25日、さいたま地裁で興味深い判決が出ましたのでご紹介します。


=平成30年(ワ)第1642号 免責条項等使用差止請求事件=
判決主文

1被告は、消費者との間で、被告が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス利用契約を締結するに際し、別紙契約条項目録1記載の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。


何があったのかというと、利用規約の中にあった「当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は一切損害を賠償しません」という条項が問題になりました。

この書き方はとても不明確で様々な読み方ができてしまいます。その解釈次第で、自分たち(DeNA)に有利な解釈をして運用しているのではないか?と疑われ、適格消費者団体から訴えられたという訳です(的確消費者団体は企業にとって結構手ごわい相手です。それについてはまたの機会に)。

本訴訟の勝敗のカギとなった「当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は一切損害を賠償しません」という文言はなぜ存在したのでしょうか?

DeNAに限らず、事業者側が一切責任を負わないという条項が記載されている例はよく見かけます。しかし、DeNAほどの大企業がうっかりしていたとは考えられません。

おそらく、規約に違反したり事業者に過度な要求をしたりするユーザーに対し、DeNAとして対抗できる手段が「そのユーザーのアカウントを停止する」だったからだと思います。それは例えば「精神的苦痛に対する慰謝料」や「ポイント等、失った財産の補償」などを要求してくるなどです。そういうクレームを抑えるために、どうしても残しておく必要があったのではないでしょうか。

ユーザーにサービスを提供するうえで、利用規約はとても重要です。それと同時に事業者側は「一切責任を負わない」という免責規定に法的懸念があることを理解し、十分な注意を払わなくてはなりません。

【消費者契約法】
消費者が事業者と契約をするとき、両者の間にある情報量や交渉力等の格差によって、消費者の利益が侵害されないように定められた法律で、不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定しています。