業務委託契約を結ぶときの注意点

雇用と委託契約の違い

副業や兼業という働き方が広がる中で、従業員が退職を申し出てきた際、副業でもいいから仕事を続けてほしいと考えることもあるでしょう。

そのような副業・兼業の人材を活用する場合、業務内容によって、雇用するべきか、業務委託契約を結ぶべきかが変わってきます。雇用契約と業務委託契約では、適用される法律が違います。ですが、安易に業務委託契約を結んでしまうと、業務内容や働き方次第で偽装請負を疑われる可能性もありますので、しっかりと違いを確認しておくことが大切です。

雇用契約
雇用契約は、就業規則や雇用契約書で定められてた勤務時間、賃金、場所等に基づき、「労働に従事する」ことを約する契約をいいます。労働者側は、仕事の完成義務を負うことはなく、決められた時間内で労務提供義務を負担します。

業務委託契約(請負)
請負人が「●●の仕事(依頼)を完成させる」ことを約束し、注文者がその結果に対して報酬を支払う契約です。この場合、請負人には「完成させる義務」が生じますが、方法については注文者からの指図がなければ請負人の判断で行います。なお、注文者には指揮命令の権限はありません。また、成果物(完成品)に不具合があった場合には(注文者の指図が原因の場合を除く)、請負人が責任を負います。

業務委託契約(準委任)
委託者が「法律行為以外の事実行為をする」ことを受託者に委託し、受託者が承諾する契約をいいます(我々行政書士が結ぶ契約はこの準委任)。受託者には「仕事を完成させる義務」はなく、「行為(業務)をする義務」を負います。なお、受託者は善管注意義務を負いますが、不具合等による責任を負うことはありません。

 業務委託による人材を活用する場合、民法(請負契約632条、準委任契約656条)のほか、次の法律が適用されます。 

独占禁止法
発注時、取引条件を明記した書面等を交付しないことは、報酬の支払遅延や減額などm優越的地位の濫用を疑われます。

 下請法
親事業者となる企業には、契約内容を明記した書面等の交付が義務付けられているほか、様々な禁止行為(買いたたき等)が定められています。

 一般的に、旅館や店舗など、シフトが決められて指揮命令のもと業務にあたるようなケースは業務委託契約は適合しないと考えられますので、「忙しい」「人手不足」というだけで安易に業務委託契約を結ぶのは避けたほうがよいでしょう。

多くの企業が直面する「忙しい」「人手不足」は、背景にある事情をもう少し深堀りしていけば経営・事業運営の課題がはっきりします。この根本的な要因をしっかりと見極め、課題解決の糸口を見つけることが大切です。