「派遣契約の途中解除」は簡単にできません

コロナウィルスが原因でも派遣先の義務はなくならない

都市圏を中心に、まだまだ油断できない状況が続いています。コロナウィルスの影響で仕事がなくなってしまったため、派遣社員を解雇したという話をよく聞きますが、「派遣先企業に契約を解除されたのだから仕方がない」とあきらめている当事者も多いようです。しかし、法律上の関係は、実はそう単純な問題ではありません。派遣先企業は、簡単に派遣会社との契約を打ち切ることができない仕組みになっているのです。(労働者派遣法29条の2)

派遣先企業が自分たちの都合で派遣社員の受け入れをやめるには

・派遣社員に新しい就業機会を確保すること

・派遣会社に派遣社員の休業手当などにかかる費用を支払うこと

・その他派遣労働者の雇用安定のための措置

これらを履行しなくてはいけません。

また、コロナウィルスの影響に伴う事業停止命令(要請)であっても、この規定が免除されないことを厚生労働省が明確に通知しているのです。

 「派遣先の都合によるかどうかについては、個別の事例ごとに判断されるものであり、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下における都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受けて派遣先において事業を休止したことに伴い、労働者派遣契約を中途解除する場合であっても、一律に労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる義務がなくなるものではありません」(厚生労働省「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請・指示を受けた業所の休止に伴う労働者派遣契約の中途解除等について」)

では、派遣先の倒産など、やむを得ない事情の場合はどうでしょう。仮に派遣先が契約解除をしたとしても、派遣会社は直ちに派遣労働者を解雇することはできません。

なぜなら、派遣先企業と派遣会社との会社間の契約と、派遣会社と派遣社員との間の雇用契約は全くの別物だからです。つまり、「派遣先がなくなった」というのは「会社間の契約がなくなった」のであって、「雇用契約」に関係ないということです。派遣会社としては、どうしても派遣先がない場合、本社の業務や自社関連の業務などで就労の確保をしなくてはならないのです。

そもそも労働者を解雇するには、社会的に合理的な理由が必要であり、休業補償など、解雇を回避するための努力を果たしたのか、解雇に値する妥当な理由があるのか、解雇する事情について説明が尽くされているのかなどの要件を満たす必要があります。

政府が様々な施策を拡充している現状においては、派遣会社は休業手当を支払い、雇用調整助成金を申請するべきだと思います。派遣先がなくなったからといって解雇するのは企業としての責任放棄に他なりません。

派遣契約が解除されるこということは、派遣労働者の雇用にも多大な影響を与えることになります。派遣労働者の雇用の安定を図るためにも、派遣契約の安易な中途解除は行わないようにしましょう。