外国人の退職申し出

就業規則で退職申入れ期間を定めておくことは可能?

外国人に限ったことではありませんが、労働契約は無期雇用の場合、当事者(会社も従業員も)は、いつでも解約(退職)の申入れをすることが可能です。民法627条では、解約の申入れ日から2週間を経過することによって、契約が終了する旨を定めています。

【民法627条】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

法律に定めがあったとしても、会社側からしてみれば、2週間前の申し出では代替人員の確保や業務の引継ぎなどに支障をきたすこともあるでしょう。

この対応策として就業規則に『退職申し出は1ヶ月前』と規定している会社も多く見受けられます(中には3ヶ月と規定している会社も)。しかし、この規定の有効性については学説的にも争いがあるところです。

退職の自由を不当に制限しない範囲で有効 (大室木工所事件/浦和地裁 s37.4.23) 
労働者の自由を奪うものとして無効 (高野メリヤス事件/東京地裁s51.10.29)

 

では、就業規則に規定を設けない方がいいかというと、そうではありません。運用としては『退職の申し出は1ヶ月前』と規定しておき、退職申し出があった時点で労働者本人と協議を行い、退職日を1ヶ月後にしてもらう労働契約の合意解約という形をとるのが望ましいと思われます。

 

外国人の退職手続き

雇用保険や健康保険の喪失手続きのほか、入国管理局へ退職証明書を送付します。ただし、日本人配偶者、定住者といった身分関係による在留資格を持っている外国人の場合は必要ありません。

本人への対応ですが

・離職票

・源泉徴収票

・退職証明書

これらは速やかに発行しましょう。退職した外国人が転職する際、入国管理局に提出を求められる書類です。合理的な理由なく発行しない場合は、外国人の退職の自由を奪う違法行為と受け取られかねません。

このように、退職申し出をしてくれればまだよいのですが、話し合いをする間もなく、翌日から出社しなくなり、連絡も取れなくなってしまうケースもあります。その場合、直ちに退職扱いにするわけにもいかず、悩ましいところですが、入国管理局への報告は先延ばしにせず、速やかに報告をしてください。なお、在留資格に従った活動を3ヶ月以上継続して行わなかった場合「在留資格の取り消し」の対象となります。

退職していった外国人がその後、不法就労や犯罪行為に関わったとして警察や入国管理局が介入してくるケースもありますが、会社としてキチンと報告をしておけば、不要な捜査や調査を避けるというリスク回避にもつながります。