下請法の規制対象
下請法とは
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律で、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の補完的な役割を果たす法律として、より具体的にどのような要求が禁止されるのかを規定しています。
・発注を受けるときはいつも口頭 → 発注書面の不交付
・代金を支払日に払ってもらえなかった → 下請代金の支払遅延
・注文を受けた後に値引きされた → 下請け代金の減額
・原料価格が高騰しているが、代金が据え置かれた → 買いたたき
これらは全て、当事者間で合意している場合であっても、下請法違反になります。
下請法では、規制対象となる取引の範囲を当事者の『資本金規模』と『取引の内容』の両面から定めています。
規制対象となる資本金規模は以下のとおりです。
【物品の製造・修理、プログラム作成、運送・物品の倉庫保管・情報処理の委託】
親事業者 下請事業者
資本金 3億円 資本金 3億円以下(個人含む)
資本金 1千万円以上3億円以下 資本金1千万円以下(個人含む)
【情報成果物(プログラム作成を除く)の作成・役務提供委託】
親事業者 下請事業者
資本金 5千万円超 資本金5千万円以下(個人含む)
資本金 1千万円以上5千万円以下 資本金1千万円以下(個人含む)
次に、下請法の規制を受けるかどうか、取引内容の面から確認しましょう。下請法の規制対象となる取引は,その委託される内容によっても条件が定められています。
【 製造委託 】
物品を販売し、または製造を請け負っている事業者が、規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを細かく指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。ここでいう「物品」とは動産のことを意味しており、不動産は対象になっていません。
【 修理委託 】
物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理したりしている場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。
~修理委託の例~
・自動車ディーラーが、請け負った自動車の修理作業を修理会社に委託する場合。
・自社工場の設備を社内で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業を修理会社に委託する場合。
【情報成果物作成委託】
ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。物品の付属品・内蔵部品、物品の設計・デザインに係わる作成物全般を含んでいます。
~情報成果物の例~
・TVゲームソフト、会計ソフトなど
・映画、放送番組、アニメ制作など
・設計図、取扱説明書、チラシ・ポスターのデザインなど
【 役務提供委託 】
運送やビルメンテナンスをはじめ、コールセンターや顧客代行サービス等の提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。ただし、建設業の事業者が請け負う建設工事は、役務に含まれません。なぜかというと、建設業法に下請法と類似の規定があって、そのなかで下請事業者の保護が図られているからです。
加害者となる親事業者は公正取引委員会の勧告により社名が公表されるなど、事業に少なからず影響を及ぼすことになります。規制対象は大企業だけではありませんので、慣習的な取引内容についても、一度見確認してみてはいかがでしょうか。