イベント中止による参加費返金がないのは違法?
申込み時の規約を確認しましょう
新型コロナウィルスが感染拡大し続けるなか、多くの大会やイベントが中止になっています。
例えば今年の3月、東京マラソン2020が一般参加者の出場は取り止めとなりました。これに参加する予定だった知人が、参加費の返金がないことについて憤っていました。
今回のような感染症の流行や天変地異(台風や地震等)が理由でイベントが中止になる場合、既に支払われた参加費やチケット代の取扱いが、時折問題となります。
解約時に違約金を定める契約をよく見かけますが、消費者と事業者との契約において、損害賠償の額は消費者契約法9条1号で、「平均的な損害の額」を超える部分は無効であると規定されています。
【消費者契約法9条1号】 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの。当該超える部分 |
例えば取引額が1万円なのに、契約解除の損害賠償が100万円になるというような契約は認められないということです。
ただし、ここでいう「平均的な損害の額」の範囲は、ハッキリ金額が示されているわけではありません。あくまでも理由や時期、数量など、個別的事情を勘案して判断されることになります。
なお「平均的な損害の額」の損害には4種類あると言われています。
1.逸失利益(粗利益) 粗利益-支出しなくて済んだ費用(利益を生むために使う経費) 2.逸失利益(機会損失) 商品の転売益、他の顧客を募集できなかったことによる機会損失 3.契約締結にかけたコスト 会員募集にかかる人件費や募集広告費、事務費用等 4.債務履行のためにかけたコスト 事務処理のためにかかった費用や人件費、交通費、通信費等
イベントの中止について当事者の一方に責任があるのか、どちらにも当事者にも責任がないのかどうかは、損害と同様、個別の事情によりますが、債務が履行できなくなったことについて双方に責任がない場合のルールを民法536条1項で定めています。
【民法536条1項(抜粋)】 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。 |
※債務=マラソン大会 債務者=主催者 反対給付=参加費
民法によれば、双方に責任がない理由でイベントを中止した主催者は、参加費を受け取れないことになりますので、参加費を返金しないという特約は問題になるでしょう。しかし今回の場合、一般参加が中止になったとはいえ、マラソン大会自体は開催されました。また、主催者は準備の間も様々な経費を負担していることや、用意していた参加賞の提供や次回開催の参加振り替えなど、参加予定者の不利益を緩和する措置がとられていることもあり、参加費を返金しないことが、必ずしも信義則違反になるとは言えないのではないかと思われます。