留学生の在留資格を「特定技能1号」に変更するときの注意点

留学生から特定技能への変更、難航することも多い

外国人雇用を検討している経営者の方から、留学生のアルバイトを卒業後、特定技能1号で雇用したいというご相談をいただきました。

留学生から特定技能への変更自体は制度上、問題ありません。ただ、意外と不許可になるケースもあるようです。その理由のほとんどは、留学生が「資格外活動許可」の制限である28時間を超えてアルバイトをしてしまったことが在留資格審査で判明し、「素行不良」とされてしまっているからです。

「アルバイトの時間なんて調査するのか?」「なぜバレる?」という疑問が浮かぶかと思いますが、それいについては以前の記事でもご紹介しました。

在留資格審査では何をされるのかといいますと、内容は多岐に渡り、大変細かいところまで審査対象となりますが、下記の3つの観点から審査されます。

(1)在留資格該当性

(2)上陸基準適合性

(3)相当性

 

(1)在留資格該当性
在留資格該当性とは、従事する予定の活動が在留資格で許可されている活動にいかに該当しているかについてです。

介護分野を例に見てみますと、の1号特定技能外国人が従事する業務として

身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴,食事,排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)

と、このように定義されています(訪問系サービスは対象外)。

出入国在留管理局は、申請者が提出した雇用条件通知書や働く場所の写真を確認しながら、その外国人が身体介護等に従事するかどうかチェックします。

(2)上陸基準適合性
上陸許可基準適合性とは、外国人が安定的に日本で就労を続けていくのに、外国人と受け入れ企業双方のスキルや財務状況に問題がないかについてです。

特定技能において外国人が満たすべきなのは、「技能試験」及び「日本語試験」に合格するか、技能実習2号を修了することです。

一方、企業が満たすべき条件には次のような条件があります。

①外国人と結ぶ雇用契約が適当(日本人と報酬が同等以上)
②機関自体が適当(5年以内に法令違反がない)
③適切な支援体制(外国人が理解できる言語で支援可能)
④外国人を支援する計画が適当(日本語教育、空港への送り迎え等の支援計画の作成)

③④は「登録支援機関」に一切を委託することで条件を満たしたことになります。特に、登録支援機関がサポートする場合は、この上陸基準適合性も整った状態で申請する場合が多いので問題ないでしょう。

 

(3)相当性
これが問題です。この相当性基準とは既に日本に在留している外国人が日本に引き続き在留する人物として、法務大臣が適当と認めるに足りる「相当」の理由があるかどうかについてを審査します。

在留資格の変更、在留資格の更新許可のガイドラインには下記の5つの相当性要件が定められています。

①素行が不良でないこと
②独立生計を営むに足りる資産または技能を有すること
③雇用・労働条件が適正であること
④納税義務を履行していること
⑤入管法に定める届出等の義務を履行していること

このうち④の納税義務の履行義務を果たしていたかどうかということを確かめるため、「留学」から「特定技能」への変更申請の際には課税証明書と源泉徴収票が求められます。

「特定技能(1号)」への在留資格変更許可申請に係る提出書類一覧

提出した課税証明書と源泉徴収票の金額が合わないと区役所で確認が必要になります。また、外国人雇用をする際は、アルバイトであっても必ずハローワークに届出が必要ですので、留学生がどこで働いていたかを調べるのは簡単です。また、アルバイト先の給料明細と銀行通帳を求められることもあります。

では、28時間以上アルバイトしてしまっていた留学生は一切採用できないのかというと、理論上考えられる方法が2つあります。

(1)再入国させる方法
「一回帰国させれば問題ない」と考えてしまうのですが、大きな問題として、送出機関(本国)に手数料を支払う必要があり、この費用が国によって20万円程度、渡航費に追加されることになります。

採用予定の外国人にこの費用を負担させるのは非現実的ですので、企業負担となる場合がほとんどでしょう。その他、就労までにどのくらいの時間がかかるのか読めないといったデメリットもあります。

(2)1年間、28時間以内でアルバイトしてもらってから申請する方法
留学生から特定技能1号への変更申請で求められるのは過去1年間分の納税証明書です。つまり1年間はルールを守って働いていれば、問題なく雇用されることになります。ただし、この方法にも大きな問題があります。
そもそも、なぜ留学生が在留資格取り消し処分のリスクを犯してまで、28時間を超えてアルバイトしていたのか?それは、そうしないと自分と母国の家族の生活が立ち行かないからです。

二つの方法を紹介しましたが、これはあくまで理論上のことで絶対大丈夫という話ではありません。28時間以内で働いていらっしゃった方を採用するのがベターであることだけは確実ですので、リスクのある選択肢はできるだけ避けるようにしましょう。