中小企業、廃業の実態

廃業を決断した企業の5割が黒字。それでも廃業を選択…

中小企業や小規模事業者は少子高齢化や人手不足など、様々な問題でその影響をダイレクトに受けます。特に近年は多くの中小企業で後継者不足が深刻化して、廃業を選択する経営者も少なくありません。

廃業は、倒産と混同される場合も見受けられますが、廃業を選択した会社のおよそ半数は黒字だったというデータもあります。倒産とは、経営者の意思に関わらず、業績が悪化してしまい、やむなく事業を辞めることであるのに対し、廃業は経営者が自分の代で会社を閉じることを決断して行うものです。倒産と廃業は、強制的なものなのか、自主的に計画したものなのかという点において大きく異なります。

経済産業省と中小企業庁が2019年に発表した試算によると、中小企業・小規模事業者では今後10年間で70歳を超える経営者が約245万人を超え、そのうちの半数以上の127万社で後継者が未定との数字が報告されています。このまま現状が改善されなかった場合には中小企業の廃業が急増し、2025年までに累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性が指摘されています。

廃業を選択した会社の半数が黒字経営であるにも関わらず、廃業を決めている理由には、一体どのようなものがあるのでしょうか。

経営者の高齢化
中小企業白書のデータでは、経営者の年齢は年々上がり続けており、平均引退年齢である60代後半から70代前半の現役経営者も多くいます。

事業の将来性
日本の人口は、ここ数年、減少し続けています。人口が減っていけば、当然国内の市場が縮小していくことになり、国内での事業が中心の中小企業にとっては先行きに不安を感じる状態が続きます。

主要な販売先との取引終了
小規模の事業者ほど、特定の取引先に依存しているケースも多いので、主要取引先との取引終了は大きな打撃となります。

家族問題
家族経営の小規模な会社の場合、家族が病気や急逝などで働き手がいなくなると、たちまち経営が立ち行かなくなります。経営状態はよくても、人手不足で廃業するケースも少なくありません。

後継者がいない
子供はいるけれど、この仕事は継がせたくない、もしくは子供もこの事業は継ぎたくない、といったケースが多いようです。また、家族や親戚に候補がいない場合、従業員の中から後継者候補を選ぶ方法もありますが、株式の譲渡にともなって資金も必要になるため、ハードルが高くなります。従業員承継も簡単ではありません。

 

廃業することは、従業員とその家族や取引先など、周囲にも大きな影響を及ぼします。できるだけ周囲に迷惑をかけないように廃業するには、それなりの準備期間が必要です。せめて1年、できれば3年くらいは準備期間を置いて計画するべきでしょう。

特に、金融機関から借入金がある場合は、返済計画についてもしっかり見直さなくてはいけません。

廃業とは、経営者にとって人生の大きな決断です。創業者である経営者なら、尚更会社に対しても思い入れもあり、冷静に判断することが難しいこともあります。

廃業を決断したとしても、第三者のアドバイスは必要です。問題を先延ばししているうちに突然病気になって、周囲が大混乱するケースもたくさんあります。まずは身近な専門家に相談してみてください。