補助金採択のあと、意外と知られていない「収益納付」という仕組み

補助金をもらって儲かったら減額される??

小規模事業者持続化補助金<コロナ対策型>の申請が間もなく締め切りを迎えます。さかもと綜合事務所でも事業所様の申請についてサポートをさせていただきました。その補助金ですが、「返さなくていい」はずなのに、実は事業計画によって補助金を返還しなくてはいけない「収益納付」という制度があります。ちなみにこの制度、ご相談にいらっしゃる事業所様は皆さんご存知ありませんでした。

持続化補助金の「収益納付」とは、補助事業の期間中に補助金を使ったことで直接収益が発生すると、補助金額から差し引かれるもというものです。

「事業を継続させようとして申請した補助金なのに、儲かったら補助金が減るなんておかしい!」と思う方も多いのではないでしょうか?

お気持ちはよくわかりますが、補助金の多くは税金が原資ですから、「税金で商品を仕入れて、利益が出る」「税金がそのまま利益になる」のは、好ましくないというのがこの制度の趣旨でもあるのです。

こちらは公募要領の抜粋です。

【参考6】収益納付について
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」等の規定により、補助事業(補助金の交付を受けて行う事業)の結果により収益(収入から経費を引いた額)が生じた場合には、補助金交付額を限度として収益金の一部または全部に相当する額を国庫へ返納していただく場合があります(これを「収益納付」と言います)。本補助金については、事業完了時までに直接生じた収益金について、補助金交付時に、交付すべき金額から相当分を減額して交付する取扱いとなります。

 

公募要領に書かれているように、「収益納付」に該当するのは直接発生した収益です。直接発生した収益という表現だけだと少しわかりづらいと思いますが、補助金と収益の因果関係がはっきりしているかどうかで判断します。

該当する例
1.補助金を使って購入した設備で生産した商品の販売・サービスの提供による利益(機械装置等費等が補助対象の場合)
2.補助金を使って構築した自社のネットショップ(買い物カゴ、決済機能の付加)の活用での販売や、他社の運営するインターネットショッピングモールでの販売による利益(広報費が補助対象の場合)
3.補助金を使って実施または参加する展示販売会での販売による利益(展示会等出展費等が補助対象の場合)
4.補助金を使って開発した商品の販売による利益(開発費等が補助対象の場合)
5.販売促進のための商品PRセミナーを有料で開催する場合に、参加者から徴収する参加費収入(借料等が補助対象の場合)

 

「持続化補助金の対象経費として申請した機械で作った製品が売れた」など、因果関係がはっきりしているときだけ収益納付に該当します。

該当しない例
なお、「商品の生産やサービスの提供に直接関わりをもたない備品の購入」、「チラシの作成や配 布」、「ホームページの作成・改良(ネットショップ構築を除く)」、「広告の掲載」、「店舗改装」な どは、収益との因果関係が必ずしも明確でないため、ここでいう「補助金により直接生じた収益」 には該当しないと考えます。また、「設備処分費」の支出は、廃棄または所有者への返還を前提とした経費支出のため、「補助金により直接生じた収益」には該当しません。

 

これらは、因果関係がはっきりしないので該当しません。チラシ配布やホームページの作成で売上げが上がるかもしれませんが、「○○円売上があった」ことを証明するのは難しいからです。ただし、ECサイトの場合はそれ自体が販路となるので収益納付の対象になります。

では、収益納付を少なくするあるいはなくす方法はあるのでしょうか?

残念ながらありません。過少申告をすれば刑事罰を受ける可能性があります。ただし、補助事業の内容によっては、必要のない収益納付を発生させないようにすることはできます。補助金は企業がしっかりと事業に取り組む方を支援するための制度です。正しく活用して事業発展につなげていってください。