事業承継で気を付けておきたいこと

中小企業における事業承継

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。中小企業にとって、社長が誰を後継者にして事業を引き継がせるということは、いつか必ず考えなければならない課題です。また、「自社株を誰に引き継がせるか」「後継者教育をどう行うか」「権限委譲の時期とやり方」等、問題が沢山あります。

中小企業の事業承継は、ほんの10年ほど前までは親族内承継が主流でしたが、最近ではM&Aを含む親族外承継が増えてきているようです。

2019年の中小企業庁白書によりますと、経営者の高齢化や後継者不足を背景に、年間4万者以上の企業が休廃業・解散しています。このうち、約6割は黒字企業であり、培ってきた技術や従業員などといった中小企業の貴重な経営資源を、次世代の意欲ある経営者に引き継いでいくことが重要な課題であるといえます。

1990年代には親族内が約83%、親族外が約17%だった承継が、近年では、親族内が約49%、M&Aを含む親族外が約51%と、割合が逆転してきました。

 

逆転した背景には

・ 零細企業にとっては長期不況で、子どもに継がせるほど事業に魅力がない

・ 子どもの人生を束縛したくない

・ 自分の引退までに子どもへの経営者教育など承継手続きが完了できない

こういう経営者の心境もあるようです。また、それなりに親が期待していても、子どもの側に継ぐ気がないというケースもあるでしょう。

では、親族に承継する場合とや従業員等に承継する場合で、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

親族に承継する場合

【メリット】
・従業員や取引先など、関係者に受け入れられやすい。
・予め決定しておけば、後継者教育のための準備期間を十分確保できる。
・相続等によって自社株を後継者に移すことができ、所有と経営の分離が回避できる。

【デメリット】
・親族に適任者がいるとは限らない。
・相続人が複数いる場合、後継者選びでトラブルになる可能性がある。

 

親族外に承継する場合

【メリット】
・会社の内外から広く適任者を探すことができる。
・長期間勤務している社員に承継する場合、経営の一体性を保ちやすい。

【デメリット】
・親族に比べ事業の継続・発展への熱意が薄い場合がある。
・後継者に株式取得等の資金力がない場合がある。
・個人債務保証の引き継ぎ等が障害になる場合がある。

 

事業承継は、誰に継ぐかによって上記のようなメリット・デメリットがあるため、それをしっかり理解した上で意思決定をしなくてはなりません。 冒頭で書いたように近年では非同族を後継者に選ぶ中小企業の割合が徐々に増えていますが、これは今後、国内における人口減少が避けられないことや、中小企業は厳しい経営環境に置かれることを見通しての決断であると推測されます。 事業承継とは、具体的には、「ヒト」「モノ」「カネ」、この3つを後継者に引き継ぐことです。「モノ」と「カネ」のいわゆる物的な承継と、「ヒト」の人的な承継は時として、分けて対策を考える必要があります。それぞれの対策を機能させることで、後継者へのスムーズな事業承継を可能にします。 事業承継の流れは、会社の現状分析から始まり、障壁となる問題点の洗い出し、様々な検討を経て実行します。 円滑な事業承継は、現社長による入念な事前準備なくして成功はありません。