派遣会社で働く外国人。トラブル対策は?
派遣スタッフの在留資格について
派遣会社は派遣先(取引先)に対して、その派遣先の業務を行うためにスタッフを派遣します。派遣スタッフが外国人の場合、在留資格がない業務に就かせることは違法行為になります。社内向けの規則に明記しておくことはもちろん、派遣先に対しても周知徹底しておかなければなりません。もし、問題が起これば派遣事業許可の取り消しにもなりかねませんし、派遣先にも多大な迷惑がかかってしまいます。労務管理には十分注意してください。
複数の国の外国人が所属していると、文化の違いなどからトラブルが生じやすいと言われています。コミュニケーションも大切ですが、まずは社内でビジネスマナーなどの教育をしっかりと行いましょう。また、労働契約書、就業規則も大変重要です。情報漏洩や横領といった事件性のある行為については損害賠償に発展することも周知しておくべきです。なお、外国人に交付する契約書等の書面は日本語および母国語の両方を作成する必要があります。Google翻訳など、無料の翻訳システムもありますが、法令や労務に関する用語がうまく翻訳されず、結果、外国人に理解されない場合もあります。行政文書や法令文書を専門に行う翻訳会社もありますので、経費はかかりますが正しく翻訳される方法を採られることをお勧めします。
派遣会社の就業規則
派遣会社の就業規則は一般企業の就業規則と同じではありません。派遣スタッフは、仕事があるときだけ労働契約を結ぶ、いわゆる「有期雇用契約」が大半であることから、秘密保持違反や情報漏洩といったトラブルも起こりがちになります。このことを念頭においた条項を設けておく必要がありますが、外国人は規則そのものを甘く考えていたり、知らなかったと主張したりするケースも少なくありません。また経験上、大抵トラブルを起こすのは、特定のスタッフであることが多いと思います(外国人に限ったことではありませんが)。繰り返しトラブルを起こすスタッフに対しては、注意しても直らないなら、実際に懲戒処分を下すことも必要です。
しかし、懲戒処分を下すとき、あるいはその制度を設計するとき、注意しておかなくてはいけないのが労働基準法第3条です。「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という規定がありますので、外国人スタッフに対してだけ特別な条項を付すことは差別につながり、無効になると思われます。トラブル(予見しうるもの、実際に起こったもの)については全従業員に対する共通事項として盛り込みましょう。そして、不法滞在等の違法行為については解雇事由として記載しておくべきですが、不法滞在そのものが即時解雇(懲戒解雇)に該当するとは限りませんので、もし実際に起きてしまったら、処分は慎重に検討してください。