コロナウイルス感染拡大による外国人労働者の環境

感染危機で顕在化した課題

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外国人労働者を取り巻く環境は、大きく変化してきています。戦後最長の景気拡大が続いた日本では、人手不足を補う外国人労働者への期待が高まっていました。日本で働く外国人労働者は、2013年以降7年連続して過去最高を更新し、ベトナムやフィリピン、ネパールなど、東南アジア出身者が増加するなど多様化が進んでいました。

しかし、今回のコロナ危機で労働力の需要が急減し、雇用状況は急激に悪化していると言っていいでしょう。

中でも外国人労働者は、コロナ危機の影響を大きく受けてしまう特徴があります。

都心に集中する傾向にあること
コロナウイルスの感染拡大は都心部に集中しているので、移動制限などの影響を受けることになります。

就業先の産業に偏りがある
コロナ危機は、宿泊業や飲食サービス業などに大きな影響を及ぼしています。これらの産業は都市部に限らず、全国的に影響を受けています。また、外国人労働者の受入れが多い産業でもあります。

雇用の受け皿は中小企業が多い
中小企業庁の資料によりますと、日本の企業は99.7%が中小企業です。中小企業は危機への耐性が脆弱な部分があり、そこで就業する外国人労働者は相対的に影響を受けやすくなります。

 

さらに、セーフティネットの面でも外国人労働者には不安があります。給付金などの支援対象から外国人が外れているケースもあり、外国人に対する支援は限定的ともいえるでしょう。

その一方で外国人労働者が、入国できないことによる問題も生じています。技能実習生が来日できないことで農業や漁業の現場では、人手不足は深刻化し、収穫できない野菜を放棄する農家や出航を延期する漁業者も出て来ているそうです。他業種からの転職者を受け入れる動きもあるようですが、他業種への転職はあまり多くなく、特に外国人労働者については、在留資格の問題もあり、転職は簡単ではありません。

少子高齢化と人口減少が進む日本では、労働力の確保が将来的に大きな課題であることは言うまでもありません。コロナ危機がきっかけというのも少し乱暴な気もしますが、外国人労働者への配慮を厚くすることは、危機後の労働力誘致を考えるうえでも大切ではないでしょうか。

来年、特定技能制度の開始から2年を迎えます。今後、受入業種の拡大や数値目標の設定だけでなく、外国人就労政策全体の議論が深まることに期待したいところです。また、外国人労働者をどのような形で日本に受け入れていくのか、改めて考えていく必要があるでしょう。