従業員の解雇について

いくつかのポイントしっかり守ってトラブルを回避しましょう

労働局や労働基準監督署には総合労働相談センターという労働トラブルに関する相談ができる窓口が設置されています。昨年度に寄せられた相談件数118万件以上、12年連続で100万件を超えています。そのうち、解雇に関する相談は34千件以上でした。

このように、労働者が行政の窓口に相談する機会が多いということは、それだけ問題が顕在化されやすいということでしょう。それは同時に「いつ訴えられてもおかしくない」ということだと言えます。

民法では、従業員と会社の双方が一定の要件を満たせば雇用契約を自由に解約できることになっています。しかし日本は長年終身雇用制が根付いており、労働者の雇用の維持を最優先に考えているため、解雇について労働契約法に例外が認められています(労働契約法16条)

関単にいうと、世間の一般な常識で考えた場合、解雇するほどの理由がないにもかかわらず、解雇をした場合はその解雇はなかったことになるということです。

例えば、最近採用した使用期間中の従業員が、他の従業員との人間関係においてトラブルを起こすなど、職場環境に悪影響を及ぼす人物だったら?経営者の立場からすれば、今後のことも考えて、使用期間満了後に退職してもらうのが一番よい対処方法だと思うでしょう。しかし使用期間中とはいえ、一方的に解雇するとなると、その行為が権利の濫用と取られて大きな火種になる可能性があります。

まず、解雇を言い渡す前に、以下のことを確認してください。

・ トラブルを起こしたことについて、客観的な証拠はあるか
・ 該当する事例について、就業規則に処分の記載があるか

この2つをクリアできれば、解雇できる可能性が高くなります。次に解雇に関するトラブルを回避するため、以下の点に気をつけてください。

・ 30日分の解雇予告手当を支払うこと(解雇する日の30日前の通知でも可)
・ 解雇する理由を十分に説明すること

この2つを押さえておけばトラブルのリスクはかなり小さくなると思われます。解雇予告(手当)は法律で定められた使用者責任の一つです。当たり前のようですが、意外と守っていない会社があるのも事実です。解雇予告(手当)を守ることによって、行政機関からの指導も弱まります。そして解雇理由の説明ですが、従業員にとって解雇の理由が明確でなければ到底納得できないのは言うまでもありません。会社が従業員と向き合い、解雇の理由を説明して説得することが大切です。

人は、感情で行動する生き物ですから、そういった些細な気配りで相手の自尊心を保つことができるのです。真摯な態度で話し合いをしてください。