下請法、親事業者の義務と禁止事項について

商慣習で当たり前だと思っていたその取引は法律違反かも?

以前の記事でもご紹介した「下請法」ですが、今回は親事業者に科せられている義務と禁止行為について。

製造業や運送業など、取引において、親事業者(取引先)が一定の資本金基準を満たしており、また、下請事業者との取引内容が「製造委託」などの役務提供に該当すれば、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用されます。この下請法では、親事業者に対し、下請事業者と取引を行う際の4つの義務と11の禁止事項を定めています。

義務付けられている4の事項

・発注の際は、直ちに書面を交付すること。

・下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。

・下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存すること。

・支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

 

禁止されている11の事項

・注文した物品等の受領を拒むこと。

・下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。

・あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

・受け取った物を返品すること。

・類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

・親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

・下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

・有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

・一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

・下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。

・費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

 

見ていただいてわかるとおり、これらの条項は、立場的に弱い下請事業者を保護する目的で規定されています。中でも特に注目すべきは「類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること」いわゆる「買いたたき」です。親事業者の行為が「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法などを総合的に判断することになります。

1、下請額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法

2、差別的であるかどうかなど対価の決定内容

3、「通常支払われる対価」と当該給付に支払われる対価との乖離状況

4、当該給付に必要な原材料等の価格動向

例えば、下請事業者からの製品単価の値上げの要請に対して、親事業者が十分な協議に応じることなく、一方的に従来どおりの単価に据え置いた場合は、下請事業者の弱みに付け込んだ「買いたたき」として下請法に違反するおそれがあります。

親事業者と下請事業者との関係において、この法律の規制対象となる資本金規模

この法律が適用されるのは、大企業だけではありません。成績やコスト削減を厳しく評価されている現場担当者レベル(あるいは店長クラス)が「お宅の変わりはいくらでもいるんだから」と、こういうニュアンスの発言をすることは、よくある話だと思います。適正なコスト負担を伴わない短納期の発注や急な仕様変更など、発注調達の部署(責任者)に対して、適正な実務が行われているか、是非一度、確認してみてはいかがでしょうか。